企業の業務を行う過程でソフトウェアの不正利用が行われた場合、ソフトウェアメーカーやBSA、ACCSという業界団体(※)から、当該企業に対して、著作権侵害に基づく損害賠償請求が行われることがあります。
そこで、本ページでは、このような不正利用が行われた場合の損害賠償額についてご説明していきます。
このページの目次
賠償額の考え方
ソフトウェアメーカー・BSA・ACCSは、ソフトウェアの不正利用者に対して、通常、以下の損害や費用の賠償を請求します。
①ソフトウェアの正規品小売価格相当額
➢ソフトウェアを不正にインストールした事案であれば、基本的に「不正にインストールしたソフトウェアの数×そのソフトウェアの1本あたりの正規品小売価格」の計算式により算出することになります。
②弁護士費用
➢上記①の正規品小売価格の10%相当額です。
③遅延損害金
➢改正民法が施行された2020年4月1日以降の行為は年3%、それより前の行為は年5%です。
そして、具体的な損害賠償額については、不正利用したソフトウェアの種類、量、価格、インストール時期等の事情を考慮してケースバイケースで定まります。
そのため、具体的な賠償額は事案によって数十万円から数億円と大きく異なることになりますが、当然のことながら不正利用したソフトウェアの量が多かったり、高額なソフトウェアを不正利用したりすると、それに伴って賠償額の相場も高額になる傾向があります。
以下、損害賠償の相場を把握していただく際のご参考情報として過去の裁判例や和解事例をご紹介いたします。
裁判例
ソフトウェアの不正利用に関する代表的な裁判例としては、以下の裁判例がありますが、これらの裁判例では以下の金額の賠償が命じられています。
①東京地方裁判所平成13年5月16日判決
賠償額 | 約8500万円 |
業種 | 資格学校 |
ソフトウェアメーカー(原告) | アドビ・システムズ・インコーポレーテッド マイクロソフト・コーポレーション アップル・コンピュータ・インコーポレーテッド |
ソフトウェアの種類 | 表計算ソフトウェア、画像処理ソフトウェア等 |
上記東京地裁判決については、裁判例紹介のページでご説明していますのでご参照ください。
②大阪地方裁判所平成15年10月23日判決
賠償額 | 約4000万円 |
業種 | コンピューター教室 |
ソフトウェアメーカー(原告) | アドビ・システムズ・インコーポレーテッド クォークインク マイクロソフト・コーポレーション |
ソフトウェアの種類 | 画像処理ソフトウェア等 |
上記大阪地裁判決については、裁判例紹介のページでご説明していますのでご参照ください。
③東京地方裁判所平成19年3月16日判決
賠償額 | 約15億8900万円 |
業種 | デザインモデル等の製作会社 |
ソフトウェアメーカー(原告) | ダッソーシステムズ |
ソフトウェアの種類 | デジタルモックアップのソフトウェア |
上記東京地裁判決については、裁判例紹介のページでご説明していますのでご参照ください。
④大阪地方裁判所平成28年3月24日判決
賠償額 | 約800万円 |
業種 | 鋼構造物の製作及び取付け等を行う会社 |
ソフトウェアメーカー(原告) | トリンブル・ソリューションズ |
ソフトウェアの種類 | CADソフトウェア |
和解事例
BSAが公表している資料によると、以下のように和解金額(賠償額)が1億円を超える事例も報告されています。
賠償金額(和解金額) | 業種 |
約4億4000万円 | ソフトウェア開発 |
約3億1500万円 | メーカー |
約2億5000万円 | 不明 |
約2億1000万円 | 学校法人 |
約1億円 | 情報・通信 |
ソフトウェアの不正利用に関する損害賠償金について疑問点やご不安な点がございましたら、問い合わせフォームにてお気軽にご相談ください。
ソフトウェアの利用状況等をお伺いした上で、想定される損害賠償金の金額やBSA・ACCS等から請求されている損害賠償金の金額の妥当性をご説明させていただきます。
※ 「BSA」は、正式名称をThe Software Alliance(ザ・ソフトウェア・アライアンス)という業界団体です。BSAには、2022年1月時点で、アドビ、ダッソーシステムズ、マイクロソフト、Mastercam、Autodesk、PTC、Bentley(ベントレー)、シーメンスなどのソフトウェアメーカーが会員として参加してます。
※「ACCS」は、正式名称を一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(Association of Copyright for Computer Software)という業界団体です。ACCSには、2022年8月時点で、アドビ株式会社、株式会社ジャストシステム、日本マイクロソフト株式会社、株式会社モリサワ、弥生株式会社、フォントワークス株式会社、ダイナコムウェア株式会社等のソフトウェアメーカーが会員として参加してます。