ソフトウェアの不正利用を行った場合には、民事責任と刑事責任を負うことになります。
そこで、本ページでは、これらの責任についてご説明していきます。
このページの目次
民事責任
ソフトウェアの不正利用者は、ソフトウェアの著作権者に対して、不正利用(著作権侵害行為)によって生じた損害を賠償する義務を負います。
また、ソフトウェアの不正利用者が法人の業務のために不正利用を行った場合には、不正利用者個人だけではなくその法人も連帯して損害賠償義務を負う可能性があります。
なお、ソフトウェアの不正利用を行った場合の損害賠償額に関しては、「ソフトウェア不正利用の損害賠償について」というページでご説明していますのでご参照ください。
ソフトウェアメーカーやBSA、ACCSという業界団体(※)が不正利用者個人や会社に対してソフトウェアの不正利用の損害賠償を請求する場合、まずは裁判外で和解交渉を試みるケースが多いです。
そして、不正利用者側が和解交渉において不誠実・不適切な対応をした場合や和解交渉がまとまらなかった場合には、証拠保全、訴訟、民事調停等の法的手続きが行われる可能性があり、BSAやACCSのウェブサイト等では、実際にこれらの法的手続きが行われた事例が多数報告されています。
証拠保全が行われた事例
証拠保全申立時期 | 裁判所 | ソフトウェアメーカー |
2022年1月 | 福岡地方裁判所小倉支部 | オートデスク インク マイクロソフト コーポレーション |
2017年4月 | 宮城県内の裁判所 | オートデスク インク マイクロソフト コーポレーション |
2016年6月 | 津地方裁判所 | オートデスク インク マイクロソフト コーポレーション アドビ システムズ インコーポレイテッド |
2015年9月 | 京都地方裁判所 | アドビ システムズ インコーポレイテッド マイクロソフト コーポレーション |
上記事例の詳細や他の事例については、以下のページでご説明していますのでご参照ください。
・BSA会員による証拠保全の事例紹介(2015年以降)
・BSA会員による証拠保全の事例紹介(2009年~2014年)
訴訟が行われた事例
「ソフトウェア不正利用の損害賠償について」というページで裁判例をご説明していますのでご参照ください。
民事調停が行われた事例
調停申立時期 | 裁判所 | ソフトウェアメーカー |
2021年2月 | 福井簡易裁判所 | オートデスク インク |
2020年2月 | 大阪簡易裁判所 | オートデスク インク |
2017年9月 | 愛知県内の裁判所 | アドビ システムズ インコーポレイテッド オートデスク インク マイクロソフト コーポレーション |
2017年5月 | 大阪簡易裁判所 | マイクロソフト コーポレーション |
上記事例の詳細や他の事例については、以下のページでご説明していますのでご参照ください。
・BSA会員による調停の事例紹介(2017年以降)
・BSA会員による調停の事例紹介(2012年~2016年)
刑事責任
ソフトウェアの不正利用(著作権侵害行為)については、不正利用者個人に対して10年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金又はその併科という法定刑が定められています(著作権法第119条)。
また、法人が著作権侵害を行った場合については、不正利用者個人に加えて法人に対しても3億円以下の罰金という法定刑が定められています(著作権法第124条)。
そして、著作権者は著作権侵害行為の刑事告訴を行うことが可能であり、捜査機関が著作権侵害の捜査を行う過程で不正利用者等の逮捕や不正利用行為が行われた会社のオフィス等の捜索差押が行われる可能性もあります。
現に、BSAやACCSのウェブサイト等では、実際に刑事告訴や逮捕が行われた事例が多数報告されています。
※ 「BSA」は、正式名称をThe Software Alliance(ザ・ソフトウェア・アライアンス)という業界団体です。BSAには、2022年1月時点で、アドビ、ダッソーシステムズ、マイクロソフト、Mastercam、Autodesk、PTC、Bentley(ベントレー)、シーメンスなどのソフトウェアメーカーが会員として参加してます。
※「ACCS」は、正式名称を一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(Association of Copyright for Computer Software)という業界団体です。ACCSには、2022年8月時点で、アドビ株式会社、株式会社ジャストシステム、日本マイクロソフト株式会社、株式会社モリサワ、弥生株式会社、フォントワークス株式会社、ダイナコムウェア株式会社等のソフトウェアメーカーが会員として参加してます。